脳神経内科医ときどき社労士

脳神経内科専門医として、頭痛や脳梗塞など身近な病気を紹介します。関係する社会保険のことも順次紹介予定!

-片頭痛性めまい- 頭痛はないけどめまいだけ... 感覚過敏性があるめまいって?

東京では桜が開花したようで、いよいよ春、という感じになってきましたね!

とても過ごしやすい季節になりますが、季節の変わり目は体調を崩しやすい時期... 皆さま、ご自愛くださいませ!

 

さて、そんな季節の変わり目は、脳神経内科の病気に悩まれる方も増えてしまう時期です。先日に紹介いたしました、片頭痛もやはり季節の変わり目に要注意な病気だったりします。

 

そんな片頭痛に関係する"めまい"について、紹介したいと思います。

 

 

片頭痛とめまいの関係

 

片頭痛とめまいの関係... おそらく医師であっても、馴染みがないかもしれません。

 

ですが、めまいの患者さんを診療していると、片頭痛との関連を否定できないめまいの方は、結構いらっしゃいます

 

片頭痛のようなしっかりとした診断基準はありませんが、片頭痛で使用する予防薬を使用することで、めまいを生じる頻度が減る方がいるのは確実です。

"片頭痛性めまい"と呼ばれることもあるので、当ブログではこの呼称を用いようと思います。

 

ちゃんと統計を取っているわけではないので、正確なことは言えませんが、前庭神経炎よりは少ないけど、その半分くらいはいらっしゃるのでは??という印象があります。結構多いです!

 

私自身、めまいの方を診療する際には、まずは"①良性発作性頭位めまい症・②前庭神経炎・③片頭痛性めまい"の3疾患の可能性は常に考えるようにしています。

 

 

 

片頭痛性めまいの特徴

 

片頭痛を患っている方のうち30-40%程度でめまいを自覚され、このような方は片頭痛の予防治療を行うことでめまいも改善します。

 

問題なのは、頭痛はないのに、めまいだけがある。そして、片頭痛の特徴だけを持っている。このような方です。

 

なので、めまいがある場合、"めまいの事ばかり考えずに片頭痛のことも一緒に考える"、ということが大切になります。

 

 

さて、片頭痛の特徴とはどのようなものでしょうか。

それは以前の投稿で強調したことですが、"感覚過敏性がある"ということ!

よろしければ、以下もご参照くださいませ。

 

neurology-kanazawa.hatenablog.jp

 

 

感覚過敏性とは、"光に過敏"とか"音に過敏"とか、という意味です。

そのために、感覚過敏性がある片頭痛の患者さんは、頭痛発作の時には、"暗くて静かな"場所を好まれます。

 

他にも、

①家族に片頭痛の人がいる

②乗り物酔いが強いと

③人ごみが苦手

④頭痛の前に前兆がある

なども片頭痛の特徴ですが、これらも、片頭痛性めまいを疑う要素になり得ます。

 

 

片頭痛性めまいの症状

良性発作性頭位めまい症(BPPV)の場合、”寝ている状態から起き上がると、めまいがして数分で収まるという症状”が特徴的でした。

よろしければ、以下もご参照くださいませ。

 

neurology-kanazawa.hatenablog.jp

 

 

片頭痛性めまいも、BPPVほどではありませんが、頭を動かすことでめまいが、"発作的に"生じるという点では似ています。

 

確定的な原因はありませんが、おそらくは片頭痛特有の"感覚過敏性"のために、回転運動の感覚を感じる場所である三半規管の過敏性を持っているということ、そして、ちょっとした頭の動きを過敏に感じてしまう結果が、めまいの発症につながっているのではと思われます。

 

 

BPPVと片頭痛性めまいの相違点の一つは、"めまいの感じ方"かもしれません。

BPPVのめまいは、その大部分は"ぐるぐる回る"めまい(=回転性めまい)である一方、片頭痛性めまいは、ふらふらするめまい(=浮動性めまい)を訴える方が、回転性めまいより多くいらっしゃいます。

 

また、めまいの持続時間も、BPPVに比べ片頭痛性めまいの方が長い、というか、"めまいの時間"と"そうでない時間"との境目が曖昧という印象もあります。

 

めまい発作が生じているときであれば、BPPVの検査で行うように、"横になって頭を回転させることで生じる眼振"があるかどうかを調べれば診断できるかもしれませんが、診察時に、めまいを生じていないことも少なくありません。

 

 

と、こんな感じで、診察しただけでは、"絶対にBPPVではない"と否定するのが難しい場合も多いです。

 

そのため、"治療的診断"といって、"片頭痛性めまいであれば改善するはず"という薬を試験的に使ってみて、効果があったら確定診断するということも多いです。

 

 

片頭痛性めまいの治療

BPPVと似ているといっても、めまい体操は無意味です。

 

では、"片頭痛が原因ならば"ということで、片頭痛を改善させるためのトリプタン製剤という薬は効くのか、というと、片頭痛性めまいに対して良く効いたと感じることは、今のところありません。

 

使用していて、唯一意味があると感じる薬は、ロメリジン(ミグシス)という薬です。

ロメリジンは片頭痛の予防のために使用する薬です。

めまいが生じた時に使用するのではなく、片頭痛と同様に、めまいが起きにくくする薬です。

 

他にも片頭痛の予防薬として、抗うつ薬や抗てんかん薬もあります。

抗うつ薬は若干有効ですが、それでもロメリジンに比べると効果が小さいと考えられます。

また、ほとんどの場合ロメリジンである程度の効果があるため、片頭痛性めまいに対して無理して抗てんかん薬を使用したことがありません。そのため私自身としては、抗てんかん薬による片頭痛性めまいの抑制効果は不明です。

 

 

 

今回のまとめ

①片頭痛に伴うめまい=片頭痛性めまいは、意外と多い!

②片頭痛としての"頭痛"を伴わない、片頭痛性めまいもある

③片頭痛性めまいを疑うカギは、"感覚過敏性"!

④片頭痛性めまいは予防薬で治療するが、めまいに対する特効薬はない

 

 

 

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いかがでしたか?

あまり聞きなれないと思われる、片頭痛性めまいについて紹介しました。

とにかく強調しているように、知られていなくても以外と多い病気です。

今回を機会に、是非とも知っておいていただければ幸いです!

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!