脳神経内科医ときどき社労士

脳神経内科専門医として、頭痛や脳梗塞など身近な病気を紹介します。関係する社会保険のことも順次紹介予定!

頭痛に漢方① -五苓散-

 今回は、"病院でなくてもできる頭痛の治療"2回目として、代表的な漢方薬である五苓散(ごれいさん)を紹介します。

 

 

 

漢方薬は、かなりの種類がドラッグストアに並んでいます。特に頭痛の場合、使い方が合っていれば効果的な漢方があります。そのため、病院に来なくてもできる治療になりえるかもしれません。

 

五苓散は、ドラッグストアで簡単に手に入ります。主要どころなら、"ツムラ"や"クラシエ"から販売されています。そしてこの薬は病院でも使用する機会が多い薬です!

 

※なお、漢方薬は医師にとっても難しく感じる治療で、診断も奥深いとされています(私も漢方の専門医ではないため、偉そうなことは言えません)。そのため、自分で実践してもうまくいかない場合は、やはり病院で相談した方がよいかもしれません。

 

 

五苓散(ごれいさん)

 

体の大部分は水である

 

体の大部分は、水が占めています。成人の場合、体重の60%以上は水分です。

そして、水分の異常は、体の不調を来しやすくなります

ところで人は、どの程度の水分を失ったらのどの渇きを自覚するのでしょうか。

それは全水分の2%を失ったときとされています。

 

例えば、50kgの体重の人の60%が水分であるとします。すると水分は30Lです。この2%はというと600mLです。ちょうどペットボトル1本分程度ですね。

30Lも水があるのに600mlだけなくなっただけでも、のどの渇きを感じるのですから、水分がどれだけ大切なのか、そしてその調節はとても細かいことが分かります。

 

さて、30Lの水分は、体の中ではどのように分布しているのでしょうか。

一番わかりやすいのは血液かと思います。血液の水成分である、"血漿(けっしょう)"と呼ばれる分は、30Lの水分のうち1/9~1/12程度、つまり3L程度です。血液って意外に少ないと思いませんか?

他にも、細胞の中に水がたっぷりあります(細胞内液といいます)。また、細胞の外だけど、血液でもない場所にも水があります(組織間液とよばれます)。特に、組織間液にに水がたまりすぎた状態は、"体がむくんだ状態"として自覚されることが多いです。

 

水毒とは?

 

このように、体の中にはいろいろな場所に水分が分布しており、それぞれの割合は細かく調節されており、その均衡が崩れるといろいろな不調が出現し、うえで示したような"のどの渇き"や"むくみ”などを生じます。

 

漢方の世界では、このような水分の分布に偏りが生じた、病的状態のことを"水毒(すいどく)"と呼んでいます。そして、水毒を治す作用のことを"利水作用"と呼んでいます。この利水作用を持った生薬(しょうやく)がたっぷり配合された漢方の代表格が"五苓散"という薬です。

 

片頭痛と五苓散

片頭痛の頭痛は、なぜ生じるのでしょうか。

それは"血管が拡張するため"、とか"血管の周りの炎症"とか言われています(三叉神経血管説とよばれます)。いずれにせよ、血管の病気です。

そして、片頭痛といえば、"感覚過敏性"です。

 

そのため、血管の敏感になり広がったり縮んだりが、とても起こりやすくなります。

天気が悪くなると片頭痛が出やすくなる、というのは有名です。

天気が悪いと気圧が下がります。外の圧が下がると、血管が膨らみやすくなる...つまり片頭痛が起こりやすくなる、という理屈です。

 

ところで、血管が広がると、その中を通っている血液は増えることになります。つまり水分の偏りが生まれるんです。ここに、片頭痛に五苓散が効く理由があります。

 

特に、片頭痛の中でも、以下の特徴がある方は、五苓散が有効である可能性ありです。

①水毒の症状がわかりやすい;体がむくんでいる、のどが渇いている

②頭痛が、天気や生理で悪化しやすい;水の偏りが起こりやすい

 

 

今回は、頭痛のときに効果がある、そしてドラッグストアでも購入できる漢方薬である五苓散について紹介しました。この薬は、分子レベルでも有効性が証明されており、漢方の世界でも特に科学的な薬と言えます。

 

頭痛の他にも、二日酔いやめまいなど、使用する機会がとても多い薬なので、是非知っておいていただければと思います。

 

 

最後まで、読んでいただきありがとうございました!