脳神経内科医ときどき社労士

脳神経内科専門医として、頭痛や脳梗塞など身近な病気を紹介します。関係する社会保険のことも順次紹介予定!

-群発頭痛- 目が真っ赤! 涙が出るほど頭が痛い? 

 

今回は、特徴的な症状を起こす、"群発頭痛(ぐんぱつずつう)"について紹介します!

群発頭痛は、一次性頭痛ですが、片頭痛や緊張型頭痛よりは頻度が少ない病気です。

  

 

 

 

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 なぜ目が赤くなるのか?

 

さて、さっそくですが、目が真っ赤になるのはなぜでしょうか?

 

一番に思い浮かぶのは、結膜炎かもしれませんね。目玉の表面にある"結膜"という膜に炎症が起こる病気... 目を強くこすったのかもしれないし、ばい菌がついたかもしれないし、はたまた自己免疫疾患という特殊な病気かもしれない。いずれも、"炎症"ということばで表すことが出来る状態です。

皮膚に炎症が起きても、目に炎症が起きても、やっぱり赤くなるんです。

 

他には、緑内障という病気があります。これは目玉の病気です。

眼圧(がんあつ)といって、目玉にかかる圧力が強くなる病気です。

とても強い頭痛を生じますが、ずっと眼圧が高いからといって頭痛があるわけではありません。何かのきっかけで(くしゃみや、長時間の目の酷使など)、発作的に頭痛を起こします。その持続時間は概ね1時間以内です。

治療はとにかく眼圧を下げることで、点眼薬による治療や手術療法などが行われます。

 

 

では、今回のテーマである、"群発頭痛"ですが、なぜ目が赤くなるのでしょうか。

そのキーワードは、"自律神経症状"です。

※片頭痛のキーワードは"感覚過敏性"なので、これと対比すればわかりやすいかもしれません。片頭痛については、以下の記事もご参照くださいませ。

 

neurology-kanazawa.hatenablog.jp

 

 

自律神経症状と群発頭痛

 

自律神経とは、"自分の意思で動かすことが出来ない臓器を動かすための神経"のことを言います。例えば、心臓は、動かそうと思って動かしていません。勝手に動いていますよね。これは、自律神経が心臓に働きかけています。

自律神経の症状で、一番一般的な症状は、”立ちくらみ"かもしれません。

血液を流している血管は、寝ている状態とか立っている状態などによって、細くしたり広げたりして、全身に血液がしっかりといきわたるように調節しています。この調節をしているのが自律神経です。

自律神経がうまく働かないと、立ち上がった時に、脳へ十分な血液が行きわたらなくなてしまいます。これが、立ちくらみです。なお、医学用語では、立ちくらみで意識が飛んでしまう状態のことを、"神経調節性失神"と呼んでいます。

 

 

このような自律神経症状ですが、これが頭痛と共に出現する頭痛のことを、"群発頭痛"と呼んでいます。

群発頭痛の自律神経症状は、次のようなものが一般的です。いずれも頭痛がある側に出現します。

 

①目が赤くなる(=結膜充血と呼んでいます)

②涙が出る

③まぶたが腫れる

④汗がでる

⑤鼻や耳の詰まった感じ

⑥瞳孔が小さくなる(黒目のことです)

⑦鼻水が出る

 

特に、涙が出るという症状が一般的です。

群発頭痛の痛みは、目の奥と訴えることが多いのですが、別に痛くて泣いているわけではないんですね。

そして、"片頭痛"は、片方の頭痛と書くにもかかわらず、両側に頭痛がでることもある一方で、群発頭痛は、原則片側だけの頭痛です。

 

 

このほか、群発頭痛は、片頭痛と対比すると、違いが分かりやすくなります

 

1.片頭痛は若年女性に多いが、群発頭痛は若年男性に多い

2.片頭痛は暗いところでじっとしていると楽になるが、群発頭痛は動き回って落ち着きがない

 

 

"群発"とはどういうことか

 

ところで、群発頭痛の"群発"とはどういう意味でしょうか。

これは、頭痛が周期的に襲ってきて、しかもその時期に、何度も何度も頭痛があるという意味です。頭痛の時期(数か月に及ぶこともあります)が来た時は、毎日特定の時間帯に決まって頭痛が襲ってきます。最も一般的な時間帯は、夜間や睡眠中のため、不眠に悩まされることも多いです。そして、頭痛の持続時間はおおむね3時間以内です。これは、症状としては類似し得る緑内障発作に比べると、少し長めと言えそうです。

 

なお、群発期間が訪れる周期は数日毎のこともあれば1年毎のこともあり、これは人それぞれです。

 

これに対し、片頭痛は頭痛が襲ってくる時期が分かりにくい場合も多いです(天気の変化や生理で頭痛が来る場合は別です)。

 

 

このように症状が特徴的な群発頭痛ですが、片頭痛に比べると有病率が低いためか、正しく診断されずに、謎の病気として放置されることもあります(医師の中には群発頭痛の診療経験がない方も少なくありません......)

なので、ここに書いているような頭痛がを自覚されている方は、ぜひとも脳神経内科や脳神経外科を受診してみてください!

 

 

さて群発頭痛の治療ですが、これも片頭痛と同様、"鎮痛薬"と"予防治療"があります

 

 

群発頭痛の鎮痛薬

 

一般的な頭痛薬はまず効きません!

片頭痛でも使う、"トリプタン製剤"と呼ばれる薬を用います。ただし、そのすべてが有効という訳ではありません。

使用感として、一番効果があるのは、"スマトリプタン(商品名;イミグラン)"という薬です。ただし内服薬ではなく、"注射薬"です。医師や看護師が注射する必要はなく、ご自身で注射できるキットが用いられます。

トリプタン製剤のうち、内服薬で唯一、効くかも、と感じる薬は"ゾルミトリプタン(商品名;ゾーミッグ)です。

 

他には酸素吸入が有効なことも、時々あります。ただし高容量の酸素を使用するので、通常市販されている酸素ボンベでは意味がありません。

 

 

群発頭痛の予防治療

 

片頭痛と違って、これが良く効く!という予防治療は少ないです。

その中でも、一般的な薬は、ベラパミル(商品名;ワソラン)です。この薬は、脈が速い人にたいして、脈を遅くするためによく使われます。そのため、副作用として、"脈が遅くなる"ことは要注意です。

 

他には、ステロイドや炭酸リチウム(商品名;リーマス)を使うこともあります。

炭酸リチウムは、躁うつ病という病気でよく使われる薬ですが、毒性に気を付ける必要があり、血液検査で、どの程度体の中に入っているか(血中濃度とよばれています)を確かめることが大切です。

 

最後に

 

最後に、繰り返しになりますが、この病気が正しく診断されることは残念ながら少ないです。まずは正しく診断されることが、とても重要な病気です。このページを読んでいただいた方が、病院を受診されるとき、場合によっては、医師に群発頭痛の可能性について、やんわりと聞いてみるのも良いかもしれませんね...

 

 

 

最後まで、読んでいただいてありがとうございました!

頭痛の原因はさまざまで、それだけ悩んでいる方が多いです。

今後も、頭痛をテーマに紹介していこうと思いますので、ご自身の症状と比べて近いかも、ということがありましたら、ぜひ参考にしていただければ嬉しいです!!