脳神経内科医ときどき社労士

脳神経内科専門医として、頭痛や脳梗塞など身近な病気を紹介します。関係する社会保険のことも順次紹介予定!

一番恐ろしい頭痛とは? -くも膜下出血について-

前回まで、片頭痛、群発頭痛、緊張型頭痛といった一次性頭痛について一通り紹介してみました。一次性頭痛は、原則、命にかかわることがない頭痛であり、頭痛で病院を訪れる方の多くは、一次性頭痛です。

 しかし、そのような頭痛の中に、突如として紛れてくる、最も恐ろしい病気の一つを紹介したいと思います。

 

  

  

 

くも膜下出血とは

 

少し紹介したように、片頭痛や群発頭痛は、突然頭痛が出現します。"発作的に"生じる頭痛、といってよいかと思います。片頭痛の発作を何度も経験していて、そんな中、"いつもと同じように起こった"頭痛発作なら、それほど怖くないかもしれません。

 

しかし、片頭痛であれ群発頭痛であれ、生まれて初めて頭痛発作を経験した場合はどうでしょうか... とてもびっくりするし怖いものです。

 

こんな、”生まれて初めてのひどい頭痛発作"を訴える方に遭遇した医師は、一番怖い病気を想定しながら診療にあたります。

その代表格が、"くも膜下出血"という病気です!

 

 

 

 

脳は頭蓋骨の中に納まっています。

そんな脳には、3枚の膜が覆いかぶさっています。

外側から、"硬膜"・"くも膜"・"軟膜"という3枚があります。

このうち、"くも膜"という膜の下で出血が起こる病気のことを、くも膜下出血と呼んでいます

 

くも膜下出血を起こす、一番の原因は、脳動脈瘤とよばれる状態です。これは、脳に血液を送っている血管の一部が、風船のように膨らんでしまう状態のことで、何らかの原因で血管の壁が弱くなってしまうために生じます。

 

風船は膨らみ続けるといつか破れてしまいます。脳動脈瘤の場合も同じで、大きくなってしまった、あるいはいびつな形になったときに破れてしまいます!!そして、くも膜の下(くも膜下腔と呼ばれます)に血液が流れ続けることで、脳をどんどん圧迫していきます。そして、放置していたら間違いなく命にかかわります

 

くも膜下出血は、とても強い頭痛を自覚する脳卒中の一つです。他の脳卒中(脳梗塞・脳出血)と違って、比較的若い人にも発症する可能性があることや、脳動脈瘤が女性に生じやすいこともあって、特に片頭痛の初回発作のときや、いつもと違った強い頭痛の場合などに、真っ先に否定しなければいけない病気なのです。

 

 

 

警告出血と髄液検査

 

ところで、くも膜下出血は、CTという検査を行えば診断できることの多い病気です。日本には多くの病院やクリニックにCTがあることもあり、海外と違って簡単にCT検査を行うことが出来ます。初めて生じた頭痛で病院を受診したときは、CT検査を行われることが多いと思います。

それなのに、医師はくも膜下出血でないかどうか、自信が持てないことがあります

 

その最大の理由に"警告出血"という状態があります。

これは、風船のように膨らんだ動脈瘤から出血するけど、すぐに血が止まることで生じます。そのため、出血量がわずかであるためCTで写らないことがあります

 

警告出血を起こして、血が止まったといっても、傷あとは"かさぶた"になっています。そのため、ふとした時に再出血を起こします。このときに初めて、CT検査で異常が発覚します。つまり、診断が遅れてしまうのです!!

 

 

このようなことがあって、”CT検査で異常がないけど、生まれて初めての強い頭痛"を訴える方を診察した場合、最後までくも膜下出血を疑い続けることになります。

 

では、このような警告出血はどのように診断するのか...

通常、"髄液検査(腰椎穿刺)"とよばれる検査を行います。これは腰に針を刺して行う麻酔のイメージです。といっても麻酔薬はいれずに、ただ検査だけを行います。

 

 

くも膜下腔は頭だけでなく、背骨の中に納まっている"脊髄"とよばれる神経の周りに続いています。この空間から液体を採取してくることで、くも膜下腔に出血しているかどうかを判定します。

 

正直、結構痛い検査です。医師側としても、申し訳ない気持ちでいっぱいで検査を勧めます。だって、こんな怖い病気を調べるためとはいっても、ほとんどの人は、検査異常なしとなって、結局は一次性頭痛の診断になるのですから...

でも、そのような  "まさかくも膜下出血だったとは"  を絶対に見逃さないために、ある意味 "無駄になる" 検査を繰り返しています

 

この記事を読まれている方の中にも、この検査を実際にされたことがある方もいらっしゃるかもしれません。そして空振りだった場合は、本当にごめんなさい...

でも、医師も悪気があって行っているわけではないので、お許しを!

 

 

今回は、医師も患者さんも、恐れているくも膜下出血について、紹介しました。

治療などについては、また別の機会に紹介できれば、と考えています。

 

 

最後まで、読んでいただき、ありがとうございました!!