脳神経内科医ときどき社労士

脳神経内科専門医として、頭痛や脳梗塞など身近な病気を紹介します。関係する社会保険のことも順次紹介予定!

歩くの遅いのにパーキンソン病じゃないの?

今回からまた病気の話を再開していこうと思います。

前々回に引き続き、パーキンソン病の関係のお話です。

 

前の投稿については、以外もご参照くださいませ。

 

neurology-kanazawa.hatenablog.jp

 

その中でも、"パーキンソン病とは症状が似通っているけど違う"、そんな病気について、紹介したいと思います。

 

 

 パーキンソン症状を生じる他の病気

前回の内容で、歩行障害や姿勢反射障害はパーキンソン病では特徴的な症状ではない、ということを紹介しました。それでは、歩行障害や姿勢反射障害が最初から目立つ病気が他にあるということでしょうか?


実は、他にもパーキンソン症状を生じる病気はたくさんあるんですね。


たとえば以下のような病気が代表的です。

 

 

①薬剤性パーキンソン症候群

パーキンソン症状が副作用として現れてしまう薬を長期的に使用することで発症する病気です。特に代表的な薬は、一部の胃腸薬や抗精神病薬です。これらの薬は一時的に飲む分には全く問題ないのですが、ずっと継続している場合に問題になります。なので、薬は、"必要な時に必要な分だけ"がとにかく大事です。

 

 

②多系統萎縮症(たけいとういしゅくしょう)

③進行性核上性麻痺(しんこうせいかくじょうせいまひ)

多系統萎縮症や進行性核上性麻痺は、国が定めた基準で"指定難病"と分類される病気です。パーキンソン病も実は"指定難病"なんですが、これとは桁違いの難病です。

とにかく有効な薬がほとんどありません。そして、パーキンソン病よりずっと早いスピードで、症状が悪くなっていきます。

指定難病として、パーキンソン症状が出現する病気は、他にも大脳皮質基底核変性症や前頭側頭葉変性症、ジストニアなどたくさんあります。

 

 

④特発性正常圧水頭症

特発性正常圧水頭症は場合によっては手術でよくなることがある病気です。なので、この病気でないかどうかは、特に慎重な判断が求められます。

パーキンソン症状として歩行障害が目立つ他、認知症(物忘れ)や尿失禁(尿を漏らしてしまう)も出現することがあります。

 

 

⑤脳血管性パーキンソン症候群

脳梗塞や脳出血が原因で発症します。といっても1個1個の脳卒中病変はそれほど問題とならないことが多く、たくさん脳卒中の病変が出来ることでパーキンソン症状が出てくることが多いです。

この病気は、脳梗塞や脳出血と同じような予防治療が大切になります。

 

 

 

 

パーキンソン病と"それ以外"の違い

 

パーキンソン病と、その他のパーキンソン症状を生じる病気の違いは何でしょうか?
一言でいえば、薬の効き方が全く違うということです。

 

パーキンソン病は、たくさんの薬が開発されています。今でも年々、その種類が増えてきています。とにかく治療の研究がとても進んでいます。


一方で、パーキンソン病以外の病気は、薬が効きにくい、あるいはまったく効かない病気もあります。

 

また、パーキンソン病とそれ以外の病気は、いろいろな検査がある現在でも、しばしば区別に困る場合があります。

そのため、当初はパーキンソン病の診断で治療を始めても、途中経過で"薬の効きが悪い"とか、"進行が速すぎる"、といったことがあるときは、その度に、診断に誤りがないかどうかを再検討しながら治療を進めていきます

 

 

 

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今回のまとめ

①パーキンソン病に似た病気はたくさんあるけど薬は効かない!

②最初はパーキンソン病だと思っても、後から診断が変わることもある!

 

 

パーキンソン病を診断する上で、重要となる、パーキンソン病以外の病気のお話を中心に紹介しました。まだまだスッキリと分類できない点が、この病気の未だ研究が進んでいない点かもしれませんね。

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!