脳神経内科医ときどき社労士

脳神経内科専門医として、頭痛や脳梗塞など身近な病気を紹介します。関係する社会保険のことも順次紹介予定!

脳卒中(のうそっちゅう)ということば

今回は、脳卒中ということばの意味、そして脳卒中という病気にはどのような病気が含まれるのか、ちょっと概論的なお話を紹介したいと思います。

 

 

 

脳卒中とは?

 

"脳卒中"という言葉、知られているものの、その意味は十分には知られていないかもしれません。 

 “脳卒中”は、脳に血液を送る血管(脳血管)に急激な異常を生じる病気のことをいいます。"卒"というのは卒然ということばに由来しますが、これは"突然"という意味です。また"中"は"中る"(=当たる)ということばに由来しています。つまり、突然病気にかかってしまうことを"卒中"といっており、脳に起こる病気だから"脳卒中"となります。

 

 

脳は場所によって、さまざまな働きをもっています。手足を動かすための脳や、言葉を話すための脳、中には心臓を動かしたり息をしたりするといった生命維持に欠かせない脳もあります。そのため、脳卒中の場所によって、生じる症状は様々です。特に、①左右どちらかの麻痺、②左右どちらかのしびれ感、③ろれつが回らない、といった症状は、脳卒中を疑うべき重要な症状です。 

 

なお脳卒中が疑われた場合は通常、脳のMRI検査やCT検査を行いますが、病状や発症時間、体調などによって、MRIを行うべきか、CTを行うべきかは、人それぞれです。

 

 

 

突然起こる脳の(血管の)病気には、血管が破れて出血する場合と、血管が詰まって脳に血液が送ることが出来なくなる場合があります。

 

 

出血する脳卒中には“脳内出血”と“くも膜下出血”があります

 

 

 脳内出血

 

心臓から送り出された血液は、首の血管を通って、脳のさまざまな場所に血液を送ります。そして下流に向かうほど血管は徐々に細くなり、最終的に髪の毛より細い血管になります。末端の血管は、高血圧などが原因となり、なお細く、固い血管になります(ガラス様の動脈硬化といいます)。そのような血管が“圧”に耐え切れず破れた時、脳内出血を生じます

 

※以前の動脈硬化の記事もご参照くださいませ

 neurology-kanazawa.hatenablog.jp

 

 

くも膜下出血

 

血管の壁が弱くなることにより、一部が“風船のように”膨らんでしまうことがあります。その状態は動脈瘤(どうみゃくりゅう)と呼ばれます。くも膜下出血は、主に脳の血管の動脈瘤が破裂することによって生じます。その他には、外傷で生じる場合のほか、"動脈解離"といって、血管の内側の壁が破れる病気でもくも膜下出血を発症することがあります。

最近では、芸能人の田中裕二さんがくも膜下出血を発症されたのは、この"動脈解離"が原因だったようですね。

 

 

"脳内出血の場合、とても細い血管の破裂であるため、自然と止血されることが多い一方、動脈瘤は太い血管に存在するため手術等で止血を要することが多いです。

 

 

  

脳梗塞 

 

血管が詰まる脳卒中には“脳梗塞”が該当します。さらに、脳梗塞の中でも、動脈硬化で生じるもの(ラクナ梗塞・アテローム血栓性脳梗塞)と、何らかの塊が脳血管に流れ着いて、突然血管を詰まらせてしまうもの(塞栓症)があります。脳梗塞は、その原因により治療方法や予防方法が異なるため、原因を突き止めるためにいろいろな検査を行います。