脳神経内科医ときどき社労士

脳神経内科専門医として、頭痛や脳梗塞など身近な病気を紹介します。関係する社会保険のことも順次紹介予定!

-中枢性めまい- めまいの原因は脳にあり!

当ブログにお越しいただき、ありがとうございます!

 

これまで、めまいを色々と紹介してきましたが、今回は"めまいを生じる病気”の、締めくくりになります。

 

これまでのめまいは、いわゆる"命にかかわることのない"めまいでした。

このようなめまいの事を、"末梢性めまい"とも呼びます。

 

そして、今回紹介するのは、末梢性めまいの反対である、"中枢性めまい”、つまり"脳"が原因となって生じる病気です。

 

一つひとつの病気を紹介するというより、"どんな時に脳が原因のめまいを疑うのか?”ということを中心に紹介していこうと思います。

 

なお、中枢性めまいを生じる脳の病気として、とにかく脳梗塞が重要です!

他に脳出血や脳腫瘍でもめまいを生じることがあります。

 

 

めまい以外の症状がある

これまでの投稿の中でも、めまい以外の症状がある病気は出てきました。

例えば、メニエール病や突発性難聴といった、”耳が聞こえにくい"、いわゆる難聴を伴う場合です。

このように、めまい+難聴の組み合わせは、基本的には"末梢性めまい"である場合がほとんどです(めまい+難聴だけど、脳が原因という、稀な状態は後述します)。

 

難聴ではない症状が、めまいと一緒に出てくる場合、そんな時は要注意です。

特に、めまいと一緒に出てきて、中枢性めまいが考えられる症状は以下の通りです。

 

①呂律が回らない(構音障害)

構音障害(こうおんしょうがい)といって、"呂律が回らない"という症状が出てくることがあります。脳の病気、特に脳梗塞では、多くの場合、この症状が出てきます。

なお、"ことばを話す"ということに問題が出てくる症状としては他に、"失語(しつご)"という症状もあります。失語は、"話そうと思っていることばが上手く出てこない"という症状のことで、"呂律が回らない"という構音障害とは別の症状です。

失語とめまいが一緒に出てくることは、ほとんどありません。

 

②顔面の麻痺

顔が動かなくなる状態です。左右両方とも動かなくなるのではなく、左右のどちらかだけです。

左右両方とも動かなくなる病気もありますが、珍しい病気のためここでは割愛します。

左右のどちらかが動かないと、多くの場合"口がゆがんで"見えるので、症状としてはわかりやすいと思います。

 

③感覚の症状

ここでいう"感覚"とは、"触った"とか"痛い"とか"冷たい"とか、といった症状です。

そのため、痛いとか冷たいという症状が分かりにくくなったり、"正座しているとき"のようなしびれ感が出たりします。

顔面の麻痺と同様に、左右のどちらかだけです。

ただし、顔は左がしびれているけど、手足は右がしびれている、というような脳梗塞もあります

 

 

④ものが二重に見える(複視)

ものが二重に見えるという症状も、脳梗塞が原因のめまいでは一緒に出てくることが多いです。この症状は"複視(ふくし)"と呼ばれます。複視は、脳梗塞以外の原因でも出てくることがありますが、やはりめまいと一緒に出てくるとなると、どうしても脳梗塞を考えなければいけなくなります。

 

 

立ち上がることもできない!

めまいと一緒に他の症状が出現する場合、脳の病気を疑う!ということを紹介しました。しかし、めまいだけしか症状がないということもあります

このような場合に脳の病気を考える症状、それは立つことが出来るかどうか、です。

 

とても強いめまいがあっても、何かに掴まったりすることで、何とか立ち上がることが出来るものです。

しかし、脳が原因となるめまいの場合、どんな事をしても立ち上がることが出来ないということがあります。

もちろん、めまいがある状態で、無理に立たせようとするなんて...ということは多く、"立つことができるかどうか"を診察室で評価するのは難しいことも多いです。なので、"病院に来るまでの間、少しでも立つことが出来たか"という情報が頼りになったりもします。

 

 

目のふるえ方で診断に挑戦!

目のふるえ方、つまり眼振で病気の原因を診断する方法は、以前の投稿でも簡単に触れましたね。

 

 

方向一定性眼振 vs 注視誘発眼振

その復習ではあるのですが、原則として、次のような見分け方がありました。

①方向一定性眼振は、脳以外が原因かも?

②注視誘発眼振は、脳が原因!!

 

方向一定性眼振とは、左を向いても右を向いても、左右どちらかにのみ、目が震えている状態でした。

そして注視誘発眼振とは、左右どちらかを向いた時だけに、目が震えている状態です。

 

 

方向一定性眼振だけど脳梗塞...の例外

この原則はとても大事ですが、実際には、方向一定性眼振なのに"脳が原因"ということがあります。

ただし比較的珍しい状態なので、そんなに多くはお目にかからないです。

 

この原因の一つとして、"内耳に血液を送っている血管が詰まってしまう"という脳梗塞があります。

 

内耳とは、体のバランスを調節する"前庭"と、音を聞くための"蝸牛"の総称でした。

この内耳ですが、実は脳に血液を送っている血管と同じ血管から、血液をもらっています(名前は、前下小脳動脈といいます)。

 

そのため、この血管が原因で脳梗塞になった場合、あたかも、左右どちらかの前庭が突然障害されたような状態になってしまいます。ただし、前庭だけでなく蝸牛への血流も遮断されるため、"音が聞こえなくなる"つまり難聴も出現します。

 

他には、顔面の麻痺も現れることも多く、"このめまい、なんかおかしいぞ!"と気づくことは簡単かもしれません。

 

 

上下に目が震えている

上下に目が震える状態、というのもあります。このような状態は"垂直性眼振"と呼ばれます(なお左右に目が震える状態は"水平性眼振"と呼ばれます)。

 

上下に目が震えていたら、まずは脳が原因で間違いないです。そして、結構危険な場所の脳梗塞であることが多いです。

 

他にも左右に目が震えずに、ただ目がぐるぐる回っているだけの眼振(純粋な回旋性眼振と呼ばれます)もあり、これも脳の病気である可能性が強くなります。

 

 

 

 

今回のまとめ

1.めまい以外の症状があるときは要注意!!

  ⇒構音障害、顔面の麻痺、感覚の症状、複視

2.どんなに頑張っても立つことが出来なければ要注意!!

3.注視誘発眼振、垂直性眼振、純粋な回旋性眼振があれば危険!!

 

 

 

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いかがでしたか?

ちょっと、盛りだくさんになってしまいました。

難しかったでしょうか.....

やっぱり、脳神経内科医をしていると、どうしても"脳の話"になると気合いが入ってしまいまして...

分かりにくいことがあったら、また再投稿しようと思いますので、是非とも指摘してくださいませ!

 

最後まで、読んでいただきありがとうございました!!