脳神経内科医ときどき社労士

脳神経内科専門医として、頭痛や脳梗塞など身近な病気を紹介します。関係する社会保険のことも順次紹介予定!

-高齢者てんかん- おじいちゃん、おばあちゃんが急にボーっとするようなった...

一般的に、てんかんは若者の病気、というイメージがあるのではないでしょうか。

確かに、赤ちゃんで発症するてんかんや、小学生で発症するてんかんなど、こどもの時に発症して成人してもてんかんの薬は飲んでいる方はたくさんいらっしゃいます。

今回は、"そうではない"高齢者になってからのてんかんを紹介します。

 

   

高齢者てんかんとは

 

突然ですが、てんかんの中に、"高齢者てんかん"という言葉があります。

その名の通り、高齢者のてんかんであるため、高齢化が進んでいる現在では、高齢者てんかんが増えてきています。

 

 

若者に多いイメージのてんかんですが、実際には高齢者になって初めて発症するてんかんも存在します。

概ね65歳以上で初めて発症したてんかんのことを、"高齢者てんかん"と呼んでいます。

 

 

 

さて、てんかんの発作について、皆さんのイメージは、どのような感じでしょうか。

おそらくは、けいれんしたり、白目をむいて口から泡を吹いていて、、という感じではないでしょうか。

このような発作の症状は、確かに主要な症状の一つです、

 

しかし、高齢者てんかんの多くは、このような発作症状ではありません。

そのほとんどが、"ボケっとしている”、"話しかけても反応が薄い"、"おかしな行動をしている"、"同じようなことをずっと繰り返している"、"ふらふら歩いている"などの、てんかんっぽくない症状なのです。このような発作症状のことは、"複雑部分発作"と呼ばれています。

 

高齢者になると、認知症を発症される方が増えてきます。

認知症の症状は、物忘れが主要な症状ですが、中にはボケっとしていたり、やる気がなくなったりという症状も一緒に出現してきます。

このような認知症の症状と"複雑部分発作"は、区別が難しいことが結構あります

中には、"非けいれん性てんかん重積状態"といって、ボケっとしていたりするてんかん発作の症状が何日も続くということもあります。

 

※非けいれん性=けいれんはではない、てんかんの症状という意味

※てんかん重積=てんかん発作が何度も何度も繰り返し起こって、まるでずっと続いているように見えること

 

すると、家族は認知症のせいと勘違いして、"てんかん"とは全く気付きません。そして、けいれんを起こしたり、意識がなくなったりといった"大きな症状"が出現したときに初めて、てんかんの存在に気づくことになります。

 

高齢者てんかんの原因

 

脳血管障害(脳梗塞や脳出血など)、②認知症、③頭部外傷、④脳腫瘍 などがありますが、原因が分からないこともあります。いずれの場合も、神経が傷つくことで神経が勝手に働いてしまい、結果てんかんを発症します。

そのため高齢者てんかんは、焦点性てんかんが多く、全般てんかんは少ないです。

 

高齢者てんかんの治療

 

先日、焦点性てんかんと全般てんかんは、治療の仕方が違うことを紹介しました。

 よろしければ、以下の記事をご参照くださいませ...

 

neurology-kanazawa.hatenablog.jp

 

 

焦点性てんかんは、若年者でも高齢者でも使う薬は基本的には同様です。ただし、高齢者になるほど、他にも薬をいろいろと飲んでいることが多いため、副作用を避けるために新しめの(=つまり安全な)薬を使うことが多いです。

 

高齢者てんかんとして、焦点性てんかんに対してよく使われる薬は、①カルバマゼピン(テグレトール)、②レベチラセタム(イーケプラ)などです。

若年者の焦点性てんかんは2種類以上を使用することが多い点に比べ、高齢者の場合は1種類の薬だけでも大体の場合はよく効きます

 

最後に

てんかんは、薬で治療できる病気なので、認知症と勘違いされたまま気づかれず放置されることはできる限り避けたいところです。

一日の中で、ボケっとしているときと、そうでないときの差が大きいなど、ふとした時に気づかれることもあります。

てんかんは、脳波という検査をすれば診断できる可能性が大きい病気です。皆さんの家族の中に、"もしかしたら..."という方がいたら、是非とも病院を受診させてあげてください。