脳神経内科医ときどき社労士

脳神経内科専門医として、頭痛や脳梗塞など身近な病気を紹介します。関係する社会保険のことも順次紹介予定!

てんかんの話

皆さんはてんかん、という言葉を聞いたことはあるでしょうか?

聞いたことはあるけど、どんな病気かは??という方は多いと思います。

今回はそんな、てんかんという病気について全体的な話を紹介します。

 

 

 てんかんとは?

"てんかん"という言葉は、結構知られているかもしれません。

ただ、ニュースでこの病気を耳にするときは、交通事故の話、、などあまり良い話を聞くことはないかもしれません。

 

てんかんという病気、実はかなりの有病率があります。1000人のうち5人以上は、てんかんを発症しているといわれており、非常に身近な病気と言えそうです。それなのに、あまり良いニュースがなかったり、場合によっては偏見もあったりして、隠している人も多くいるかもしれません。

 

治療や啓蒙を通して、てんかんという病気の悪いイメージを少しでも払拭していくことが、我々医療人がなさねばいけないことと感じています。

 

 

てんかんはなぜ起こる?  

てんかんの話を始める前に、”脳みそ”の話から始めたいと思います。

 

人の体が、たくさんの"細胞"から成り立ってます。そして脳には、"神経細胞"という細胞があります。神経細胞は脳の表面にたくさん並んでおり、それぞれの場所ごとに、いろいろな働きがあります。

例えば、頭のてっぺんにある神経細胞は、手足を動かす働きがあります。また、頭の後ろのほうにある神経細胞は、"視力"に関する働きがあります。

 

このような神経細胞は、お互いが綿密に連携し合っており、神経細胞が"好き勝手に"、また"めちゃくちゃに"働くことは決して許されません

 

神経細胞は、非常に小さな電気で動いています。神経細胞が電気を出して働くことを"発火(はっか)"と言ったりもします。神経細胞はお互いに電気を出し合って、綿密に連携しているのです。

 

もし、統制がしっかりとられている神経細胞の中で、好き勝手に"発火"する神経細胞が出てきたらどうなるでしょうか?

例えば体を動かすための神経細胞が勝手に"発火"すると、手足が"動きすぎてしまう"状態が出来てしまいます。このような状態が、"けいれん"と呼ばれており、てんかんの主要な症状の一つとなります。他にも、視力に関係する神経細胞が勝手に働いてしまったら、"幻視"が出てくるかもしれません。

 

 

焦点性てんかんと全般てんかん

このように、脳の一部の神経細胞の異常で、症状が出るてんかんのことを、"焦点性てんかん"と呼んでいます

そして、焦点性てんかんとは別に、"全般てんかん"という言葉もあります。

 

脳の表面の神経細胞は、脳の奥にある神経細胞で制御されています。

この脳の奥にある神経細胞が、勝手に働いてしまったらどうなるでしょうか?

この場合、脳全体に異常な電気が、一気に流れてしまいます。その結果、全身にけいれんが出現したり、全身が脱力したり、、といった、とにかく"全身の"症状が出てきます。このようなてんかんのことを、"全般てんかん"と呼んでいます。

 

 

焦点性てんかんと全般てんかんは、その発症原因が異なるということもありますが、なにより、治療のための"薬"が微妙に異なったりします。特に、焦点性てんかん用の薬を、全般てんかんに使用したら、無効なばかりか、かえって症状が悪くなったりすることもあります。

 

そのため、焦点性てんかんと、全般てんかんを区別することはとても重要となり、また十分な問診や診察の上で、脳波やMRIといった検査を行い、診断の精度を上げていくこととなります。

 

診断が正確であれば、有効な治療に直結することが多く、薬を飲んでいれば、普通の生活を送ることは十分に可能です。また、発作がない状態が続けば自動車運転も十分可能となります。

 

最後に(医師からお願い)

最後に、ここを読まれている方の中に、てんかんをお持ちの方のご家族や、友人がいらっしゃる場合、お願いしたいことがあります。

けいれんしているところに出くわしたとき、とても驚くかと思います。ただ、その中でも、短時間でもよいので、スマホ等で、けいれんしているところをビデオ記録していただければ嬉しいです。実は、脳波よりMRIより、けいれんしているところ、またてんかん発作を起こしている状態を実際に見ることが、一番診断への近道です。

どうか、よろしくお願いします。